
2023.10.01 @WARP SHINJUKU

2023年10月1日(日)、VTuberオリジナル楽曲アルバム「VirtuaREAL」シリーズを皮切りに数多くの楽曲やイベントを手がけるUSAGI Productionが新時代のバーチャル音楽フェス「VMusic」をWARP SHINJUKUで開催した。2フロアに展開された会場では、様々なDJ陣やアーティストがパフォーマンスを行った。これまでUSAGI Productionが主催してきたリアルイベントの中でも最大級の規模を誇る「VMusic」。これまでバーチャル音楽シーンに様々な旋風を起こしてきたUSAGI Productionが、2023年終盤にどのような景色を見せてくれたのか、新時代のバーチャル音楽フェスの様子をお届けする。


UNIVERSE FLOORとFORCE FLOORで展開された会場内では、バーチャルの音楽という1点のみを軸に、いい意味で一貫性のない多彩な空気感を作り上げていた。UNIVERSE FLOORはDJプレイだけではなく、バーチャルアーティストのライブが展開され、ライブでしか生まれない一体感が相乗効果となって、爆発的な盛り上がりが見られた。バーチャルアーティストのライブを織り交ぜるクラブイベントは存在するが、ここまでの大所帯の出演者を混ぜて、ごく自然とバランスよく展開されるイベントは少ない。USAGI Productionが、これまで積み上げてきたイベントの経験をフルに生かしたようなイベントがVMusicと言っても過言ではないだろう。

開演すると、UNIVERSE FLOORの大スクリーンにGEMS COMPANYの水科葵と長谷みことが登場。そして「VirtuaREAL」を始めとして、様々なイベントや企画の仕掛け人であり、自らも最前線でDJを行うUSAGI Production代表のTAMUが登壇した。注意事項を始め、イベントのスタートをバーチャルアーティストと共にマイクパフォーマンスを通して発信していくのもUSAGI Production主催イベントの特徴だろう。身が引き締まるのと同時に、イベントスタートに向けて会場の一体感を助長する。オープンと同時に超満員となったUNIVERSE FLOORに向けて「楽しんでいきましょう!」という言葉を投げかけ、VMusicの幕が開けた。


UNIVERSE FLOORトップバッターを任されたKakeruが容赦無く会場を奮い立たせる。スロースタートとは無縁な、ハイテンポなダンスミュージックで序盤からフロアを揺らした。単純にヒットナンバーを流すというわけではなく、上手く緩急をつける選曲で、飽きさせない空間を演出する。会場の空気感や雰囲気、絶妙にフィットするようにVJ陣が繰り出す映像も大迫力で、音とのコンビネーションも相まって思わずのめり込んでしまう。重低音のダンスナンバーに、徐々にオーディエンスも応えるように体を揺らし、飛び跳ねていく。イベント序盤は様子見するオーディエンスが多い印象があるが、音楽という素材をもとに、半ば強制的に音に溺れてしまう空間が1番手から完成されていた。


続いて登場したDJは、TAKUYA the bringer。開幕に生成されたエッジの効いたダンスミュージックの空間とはまた色の違う、ピースフルな楽曲でフロアを盛り上げていく。ダンスミュージックはもちろんのこと、クラシックナンバーとも言えるポップなバーチャルアーティストの名曲たちを散りばめていく。今回数多くのDJやアーティストがパフォーマンスを行ったが、それぞれの特色を生かした楽曲で独自の世界観を構築し、オーディエンスに休息を与えないような空間作りが行われていた。もちろんTAKUYA the bringerも例外ではなく、新旧を織り交ぜながらオーディエンスの情緒を揺れ動かし、終盤では「まだまだ踊れるでしょ?」の言葉を皮切りにトドメと言わんばかりのラストスパートをかけていく姿が印象的だった。

VMusicの魅力の1つとして、2階に設置されたFORCE FLOORの盛り上がりは欠かせない。コスプレイヤーをはじめ、カルチャー内でも前線を走り続けるDJやクリエイター陣がUNIVERSE FLOORに引けを取らないパフォーマンスを展開させていた。全フロア通して、個性がひしめき合う戦場のような熱量を持っており、DJプレイ以外にもライブペイントも行われた。楽しみ方の幅が広く、体が1つだけでは足らないと思わせるほどのエンタメ性が1つのイベントに詰め込まれている。


この日最初のDJライブパートとなったDJ ChumNote feat.結目ユイ。始めに、この日DJとして参戦したChumNoteが挨拶代わりにフロアをロックしていく。スクリーンに映されたChumuNoteを、サイバーなものからノイズ混じりのバックグラウンドが目まぐるしく彩っていく。加速的な映像描写と、様々なダンスミュージックの調合がフロア全体に心地良いバッファーをもたらしているのが客観的にも感じ取れる。そして持ち時間半分ほど過ぎたタイミングで、「初めて配信見てハマった」というChumNoteバックボーンを踏まえつつ紹介され満を辞して結目ユイが登場。フロアの照明が落とされ、結目ユイのピンクカラーのペンライトがオーディエンスから光り出す。ライブを通して、爆音の音楽と同時にピンクのレーザーライトが縦横無尽に暴れる光景が印象的。MCパートでは、ChumNoteとの掛け合いで笑いを取りながらも楽曲への煽りもしっかりこなしていく。そして、ライブパートでは、今回2人で歌った新曲「紙ヒコーキガール」を披露し、ギャップのある透き通るような歌声と、力強さのある芯の通った歌声を細かく使い分けていた。ライブパフォーマンスのクオリティと、序盤のChumNoteによるDJが絶妙に噛み合った時間を堪能することができた。


ライブの余韻をかき消していくのではなく、余韻を残しつつも、高揚感を残すようにゆっくりと自分の世界観へとフロアをロックしていったKOTONOHOUSE。自身の楽曲を織り交ぜながら、キャッチーで思わず口ずさみたくなるようなダンスミュージックの殴打が展開されていった。プレイタイムを通して目まぐるしいほどの様々な音楽が披露されていき、ドリーミーでポップなサウンドが、フロアの熱量をじわじわと加速させていく。エネルギッシュな音楽から妖艶チックなダンスナンバー、決して凝り固まった一貫的なサウンドを駆使するのではなく、時間を最大限使い世界観を緻密に構築していくパフォーマンスは圧巻。ライブ後の熱量を保持したまま、あっという間に時間は過ぎていった。


続いて登場したのは、VMusicの主催であり、これまで「VirtuaREAL」シリーズなど、数多くのイベントを手がけているTAMU。バーチャル音楽のアンセムをこれでもかというレベルで叩き込み、イベント中盤の起爆剤となるようなプレイを見せていく。すごいのは、単純にアンセムを繋いでいくというわけではなく、限られたプレイ時間の中で上手く起伏を表している組み立てだろう。そして最も特徴的なのは、痒い所に手が届くような選曲の妙だ。今では数え切れないほどのアンセムが存在するバーチャル音楽シーンの中から、流れから発生した次曲の期待値を上手く拾い上げて、曲の切り替わりと共に爆発的な歓声がフロアを覆いつくしていた。


開幕「GROUND-ZERO / MaiR」(カバー)で爽快で豪快なスタートを切ったのは、今回VMusicでMCも務めているGEMS COMPANYの水科葵と長谷みことが登場。「今日くらいははっちゃけていきましょう!」と息の合った掛け合いも見せながら、しっかりとオーディエンスを煽っていくMCはさすがだった。いっぱい歌うことが今日のテーマ、とシンプルかつオーディエンスには嬉しい宣言をしたように、電音部の「いただきバベル」とカバー曲を織り交ぜながら「形而境界のモノローグ」「ゴールデンスパイス」と自身のグループ曲をミックスさせていくセトリで、常にフロアを盛り上げていく。豊富なライブ経験をしている2人が織りなすパフォーマンスは圧巻で、タイトルコールから曲中の煽りまでスムーズかつ的確なタイミングで最初から最後までフロアをロックする姿は圧巻だった。


独創的で未曾有の世界観を提供したピリオ(sasakure.UK)が登場。開幕から「Mr.Wonderland feat.ピリオ」「BlackFlagBreaker!!」と、sasakure.UKが手がける高密度の電子音楽がフロアを占領する。激しいビートに合わせて数多くの手拍子が巻き起こり、フロアの一体感が増していく。「レッド・ルーラー」では、液晶全面が燃え盛る赤色に包まれ、映像演出と相まって高揚感が助長されていく。続けざまに「閃鋼のブリューナク feat.ピリオ」「LostUtopia feat.ピリオ」とメロウな電子サウンドが怒涛のように飛び交い、紫に輝くスポットライトが稲妻のように暴れ回る。自身が手がける楽曲を中心に、常にフロアをロックし続ける姿は印象的で、ファンにはたまらないセットリストであると同時に、その場にいるだけで重度の没入感へつ誘うようなパフォーマンスはさすがとしか言いようがない。


VMusicも後半戦へと突入し、オーディエンスに休憩を与えないような怒涛のパフォーマンスが展開されるなか、PandaBoYが自身作曲した「BLUE CLAPPER」でスタートを切り、イベントの熱気や勢いを引き継ぎながらさらに加速させていく。ホロライブや富士葵、にじさんじといったバーチャルシーンを牽引するキーマンたちの楽曲を中心に、自身が手がけた楽曲を織り交ぜながら展開させていく。多彩なジャンルの楽曲たちが目まぐるしく繰り出されていき、オーディエンスの情緒を心地よくみだしていく光景が広がっていた。そしてセトリに合わせて、映像演出も激しさを増していく。カラフルなスポットライトや演出が、楽曲が入れ替わるたびに大迫力で映し出されていき、触発されたオーディエンスが無造作に踊り狂うようにフロアを駆け回る。まるで出演陣がバトンを渡していくように、それぞれの色を出しながらフロアの熱気を着実に上げていくような展開が見られた。


作曲家、ボカロPとして、そして最近ではバーチャルアーティストへの楽曲提供も手がけるいよわが登場。開幕、月ノ美兎や長瀬有花といったバーチャルアーティストの楽曲からスタートし、歌い手からインターネット音楽のアンセム、アニソンなど、ネット音楽やアニメ文脈の強い楽曲を細かく繋いでいく。もちろん自身の手がけた楽曲も目まぐるしく展開しており、いよわ本人も激しく音に身を任せている姿が印象的だった。ジャンルも様々で、ダンスミュージックからバンドサウンド、ポップスまで、多彩な音楽が短いスパンで披露されていく。そんなパフォーマンスの影響は絶大で、聴き手として全く飽きのこないエンタメ性と時間の感覚が狂ってしまうほど一瞬で時間が過ぎていく。多彩な音楽という意味では、わりかし新しめの楽曲だけというわけではなく、昔のアンセム的な楽曲を違和感なく挟んでいくパフォーマンスは印象的だった。


VMusicのトリを飾るのは、USAGI Productionのクリエイターで、「VirtuaREAL」ではお馴染みのD.wattとThe Herb Shopが登場。この日1番のマイクパフォーマンスを行ったと言っても過言ではないだろう。重低音かつ激しいバーチャルアーティストたちのクラブミュージックが怒涛のように繰り出され、尚且つD.wattが身を乗り出してオーディエンスを煽っていく。イベント最終盤に繰り出される激しいサウンドは、正真正銘ラストスパートと言って過言ではないだろう。オーディエンス自体も全くと言って疲れを感じさせないアグレッシブさで、怒涛のクラブミュージックに合わせていく。曲の雰囲気自体はしっとりとしたものはないものの、イベントがもうすぐ終わってしまうという焦燥感がじわじわと伝わってくる。最後の最後まで盛り上がろうというスタイルは、まさにUSAGI Productionらしいイベントスタイルだろう。


イベント終了後、主催のTAMUがステージへと登壇し、この日イベントを彩った演者たちを紹介した。紹介されるたびに、フロアの光景がフラッシュバックされるような感覚になり、イベントが終わったとは思えないほどフロアはまだまだ熱気に包まれていた。そして、余韻に浸る間も無く、重大告知が行われた。1つ目はVTuberオリジナル楽曲アルバム第8弾「VirtuaREAL.07」リリース。それに伴ったリリースイベントも同時に発表された。そして新時代のバーチャル音楽フェス「#VMusic 02」開催も発表。2024年新春開催予定で、再びVMusicの熱気を浴びることができるということで、オーディエンスからは大歓声が上がっていた。
【VMusic 公式サイト】
https://vmusic-dj.com
【USAGI Production】
https://twitter.com/usagipro777
執筆者 : 森山ド・ロ
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発売元/販売元 株式会社BOLT