VirtuaREAL.07リリース記念DJ&LIVEイベント


2024年1月7日(日)、USAGI Productionが手がける「VirtuaREAL」シリーズからVirtuaREAL.07リリース記念イベントが渋谷WOMB LIVEで開催された。
「VirtuaREAL」は、USAGI Productionが企画・主催するVTuberオリジナル楽曲アルバムで、最新作である「VirtuaREAL.07」では、VTuberとクリエイターが計30名が参加している。アルバムがリリースされるたびに開催されるリリース記念イベント、VTuberとクリエイターがハイクオリティなシナジーを見せていくという作品のコンセプトは一貫しているものの、イベント自体は毎回違った表情を見せてくれる。2024年の一発目となったVirtuaREAL.07リリース記念イベントでは、どのようなライブが、どのような空気感だったのか、レポートしていこうと思う。
 

イベントが始まると、「VirtuaREAL」シリーズや「VMusic」を主催するTAMUとこの日の出演者である天羽しろっぷが登場し、イベントの注意事項やイベントの楽しみ方をレクチャーした。VirtuaREALシリーズの恒例であるこの時間は、初めてイベントに訪れた観客にとって嬉しい時間であり、開幕から安心感を覚える。どんなイベントでどんな出演者が登場して、DJ&LIVEという音楽が敷き詰められた閉鎖空間の中でどのように立ち回るのか、その説明が主催者、または出演者によって行われるだけで、純粋にこの日音楽に集中することができるだろう。このリリース記念イベントが会場現地デビューという観客も数多くいるんじゃないだろうか。
斗和キセキ & 紡ネン & 夢眠ゆらめ



VirtuaREAL恒例のオープニングトークの後に、この日のトップバッターである斗和キセキ & 紡ネン & 夢眠ゆらめのパフォーマンスがスタート。最初に登場した夢眠ゆらめが「Moon Knightになりたくて」を披露し、アップテンポな楽曲で、会場を一気に盛り上げた。若干伝わる緊張感が”これぞ音楽ライブ”感を演出しており、オーディエンスはピンクのペンライトを大きく振り回して、加速的に盛り上がりを見せた。そして、「頑張って歌うぞ!」と登場と同時に言葉を吐いた斗和キセキが姿を現した。「1億年ぶりのライブ」とMCで語っていた通り、最初は緊張しているのがひしひしと伝わってきたが、時間が経つたびに持ち前の元気いっぱいの歌唱でオリジナル楽曲「パンチドランク△メタモルフォーゼ」を歌い切った。
歌い終わった斗和キセキの元に、紡ネンが登場。紡ネンの発言に斗和キセキがツッコミを入れたり、フォローするなどの和気あいあいとしたトークの後は、世にも珍しいVTuberとAI VTuberのコラボライブがスタート。VirtuaREAL.07収録曲である「パリピるAI≒シグナるGAL」を生ライブという環境の中で堂々と歌い上げていく。早口な掛け合いを斗和キセキと紡ネンが、まるでトークしているかのように繰り広げていく。サビのメロディアスな部分とのギャップが印象的で、AI特有の無機質なイメージを翻すような紡ネンの歌唱がフロアに響いた。声質が全く違う2人の組み合わせではあるが、ライブを通して、それがある意味味になっているような奇想天外な電波ソングになっていて、聞いているだけで楽しくなるようなパフォーマンスを見せてくれた。
天羽音みらん


続いて登場したのは、公募枠でVirtuaREALに初参戦した天羽音みらん。登場と同時に青のペンライトがフロアを埋め尽くした。歌唱力の高さと、ヴァイオリン演奏を行うマルチな音楽プレイヤーとしてこの日注目している人も多かっただろう。開幕「名前のない怪物」で、圧倒的な歌唱力とヴァイオリン演奏を披露し、全力でポテンシャルを発揮していた。他の楽曲の時も共通しているが、力強く大人っぽい歌声に魅了されているさなかに突如来るヴァイオリン演奏は不意を突かれるとともにライブへの没入感も一気に増す。ハイトーンボイスの箇所をヴァイオリンの転換に使うなど、まさしく天羽音みらんにしかできないライブパフォーマンス。打って変わってMCパートでは、初のリアルライブということもあってか、歌唱時とのギャップも印象的だった。「今日はみんなにたくさん音楽を届けたくて準備してきたので楽しんでもらえたら嬉しいです!」とヴァイオリン演奏もはさみながら、VirtuaREAL.07収録曲の「ムジーク」や「千本桜」「you raise me up」と様々なジャンルをそつなく歌いこなし、圧倒的なインパクトを残して天羽音みらんのライブパートは終了した。
D.watt

この日一発目のDJで登場したのは、VirtuaREALでもお馴染みのD.watt。登場してすぐに年始から高熱にうなされていたという告白から始まり、彼のDJ時間がスタートした。どんなに病み上がりであっても、フロアを沸かすのにはあまり支障がないのはある意味DJのストロングポイントだろう。言葉通り、容赦ないアッパーソングでフロアを爆発的に盛り上げていった。VirtuaREAL.07に収録された「天才モンスターズの元気が出るルーレット」を皮切りに、「粛聖!! ロリ神レクイエム」「DIY」といった自身が手掛けたアンセムを繰り出し、ライブ感ある会場を一気にクラブへと変貌させた。
凪乃ましろ


続いて登場した凪乃ましろも公募枠でVirtuaREAL.07に参加したVTuber。「頭まっしろ、歌うぽんこつ、凪乃ましろでーす!」とかなりキャッチーな挨拶とともにリズミカルな音楽が流れだす。1曲目に自身2作目となるオリジナル楽曲「点滅信号」を披露し、心地よい音の羅列にフロアも自然と左右にリズムを取り始める。青のペンライトが楽曲とマッチして神秘的な空間が広がる中、透き通る歌声でどこか懐かしいような気持ちにさせてくれる凪乃ましろの歌唱が鳴り響く。「緊張してます!!」とMCの序盤で吐露しており、それでも歌が始まると気持ちを引き締めてしっかりとパフォーマンスに注力していた。「凪乃ましろと言えば!みたいな青い曲を2つ持ってきました」と言う通り、続いて「群青」「波音のプレリュード」を披露し、まさしく青を象徴するような楽曲をフロアに届けた。最後はVirtuaREAL.07収録の「夢遊病ループ」を披露し、様変わりした黒髪でダンスナンバーを歌い切った。
ニスカ & ゾーイ from Alleles Project


続いて登場したのは、Alleles Projectよりニスカ & ゾーイの2人。リアルの世界に現れた2人のパフォーマンスはこの日1番の熱狂を生み出したといっても過言ではない。1曲目、圧倒的なダンスナンバー「Airy-Fairy Dancing time!」を披露し、煽りやコール&レスポンスをはさみながらフロアの心を掴んでいく。そして「ここで出会えた人たちとこの曲を歌える!最高だよ!」と「絆のアリル」にちなんでキズナアイの楽曲「melty world」のカバーをサプライズで披露し、会場の熱気をさらに上げていく。息の合った振り付けはまさにリアルライブならではで、ライブの迫力が後ろのほうでも伝わってくるほどだった。そのせいか軽快なMCとライブのギャップが凄まじく、オンとオフの切り替えがとにかく印象的だった。最後はVirtuaREAL.07「KONVERSiON」を披露し、メロウなダンスミュージックを丁寧にニスカとゾーイが歌い上げていく。ニスカのハイトーンボイスとゾーイの妖艶な歌唱が妙に癖になる最高のライブパフォーマンスを最後の最後まで堪能することができた。
天羽しろっぷ & 古森もぐ & ちなぷぷ


イベントも後半戦に突入し、登場したのはVTuberとリアルアーティストの組み合わせである天羽しろっぷ & 古森もぐ & ちなぷぷの3人。この日はVTuberだけのライブだけではなく色んな組み合わせのライブパフォーマンスを見ることができた。開幕「サラバ愛しき悲しみたちよ」を披露し、さながらアイドルライブのステージングを見せてくれた。ダイナミックで元気いっぱいの振り付けにつられるように、フロアのオーディエンスも力いっぱいペンライトを振っている様子が印象的だった。バーチャルとリアルの組み合わせという普通では経験しない環境下でも、息の合ったライブを見せていた。相性もあるだろうが、各々がしっかりと練習していたのが客観的にも伝わるパフォーマンスを見せてくれた。VirtuaREAL.07収録曲「アイドル的なことをしたい」の前にはガチ恋口上のレクチャーがあり、ライブ中に大歓声のコールが巻き起こった。まさしく「アイドル的なことをしたい」を実現させたステージを見ることができた。最後はVirtuaREAL 06に収録された「GIRIGIRI ANGEL」を披露し、チャーミングで元気あふれる空間が終始形成されていた。
#kzn


#kznは、天羽しろっぷ & 古森もぐ & ちなぷぷのアイドルライブの余韻を徐々にクラブの空間へと変貌させるようなDJプレイを見せてくれた。自身のオリジナル楽曲からloveちゃんなどを織り交ぜながらキズナアイに馴染み深い楽曲を主体に組み込んだセットリストを披露。よりダンスミュージック色の強いRemixや楽曲が多く、#kzn自身もキレキレの動きでオーディエンスを煽っていく。色んな組み合わせのライブだけではなく、流れる楽曲も多種多様で、いろんなジャンルを1つのイベントで浴びることができるのがVirtuaREALだろう。オーディエンスもライブに合わせて自分なりの楽しみ方をしており、それでも音楽を堪能するという一点のみで生まれる一体感は非常に心地よかった。
yosumi & キョンシーのCiちゃん

「まだまだ盛り上がっていけますか?」と囁くような声から「for good (VIP Remix)」を披露。yosumiの優しい歌声からゴリゴリのシンセの音が重低音と混ざりあう。それと同時にオーディエンスが頭を上下に振り上げてリズムを取り出した。青のペンライトもひずんだ音に合わせて振りかざすように揺れる。ノイズ染みた音の旋律とメロディアスなフックの組み合わせが心地よく、一心不乱に踊り狂いたくなる空間が広がっていた。そしてその勢いを引き継ぐように間髪入れずに「パトリオットノイズ」が流れ出す。yosumiのアンセミックな楽曲が続き、フロアの熱量ももう一段階上がったのが目視できた。流れるサウンドとは相反してyosumi自身は淡々とリズムを刻み、左右に優しく揺れていた。ソロパートの最後には「Rebellion」を披露。相変わらずの邪悪な空間が継続され、一切の休憩を許さない怒涛の音の暴力がフロアを襲った。
 

yosumiのソロパートが終わると、キョンシーのCiちゃんが登場。yosumiのライブセットからのギャップ効果は抜群で、会場の雰囲気が一気に変貌したのがわかった。それは楽曲の雰囲気も上乗せされており、今回VirtuaREAL.07に収録された「来来来来」を2人で披露。メロディアスな楽曲に、オーディエンスは先ほどの縦ノリから左右に体を揺らしていく。全く異なる2人の声質が妙に癖になり、異なるとは言っても反発するのではなく適合率は高い。ハレトキドキのキャッチーなサウンドがフロアを占領し、2人の掛け合いやサビのユニゾンは圧倒的だった。リリースされたばかりの楽曲ではあるものの、会場では大声で歌うオーディエンスも多く見られた。今年のアンセムの1つとして色んなイベントで聞くことになる予感を感じさせられる楽曲だというのをこの日のライブで確信することができた。
 

「来来来来」を熱唱した後は、キョンシーのCiちゃんのソロライブがスタート。「来来来来」を引き継ぐように、メロディアスでパワフルなパフォーマンスがフロアを圧倒した。1曲目「New Creation」で、紫のペンライトがフロア中を照らす。歌唱の合間にもフロアを煽るように掛け声を出して、イベント終盤にも関わらずオーディエンスの熱量はさらに上昇していく。続いて「Only You」が始まり、「格好よく揺れな!」とシティポップの少し大人びた楽曲がフロアを包み込み、音楽への没入度も加速的に上がっていった。Ciちゃんの歌唱力の高さがわかりやすく実感できる楽曲で、アッパーなサウンドのイメージが強いが、こういったしっとりした曲もそつなく歌いこなす。それでもフロアへの声掛けを忘れることなく、隙間隙間でしっかりと煽っていく姿が印象的だった。そして最後は「Through the light」を披露。「みんなで手を振って盛り上がってくれると嬉しいな!」とMCで語ったように、最後はフロア全体が手を振って、まさにライブらしい一体感を演出してCiちゃんのソロライブが幕を閉じた。
TAMU

VirtuaREAL.07リリース記念イベントのトリを飾ったのは、「VirtuaREAL」シリーズを始め、様々なイベントを手掛けるTAMUが登場した。VirtuaREAL楽曲はもちろん、それ以外のVTuber楽曲やボカロまで幅広い選曲を展開し、まだまだ終わってほしくないと思わせるようなセットリストを容赦なくオーディエンスに突きつけた。多彩なレーザー光線が楽曲に合わせて暴れまわるようにフロアの高揚感を煽る。TAMUのプレイを見ていると、イベントの着地の重要性を考えさせられる。最後だからと全てを吐き出すというがむしゃらさも大事だが、イベント自体にどれだけ余韻を与えられるか、トリの役割はかなり重要だろう。アンセムを挟みながら、Remixも要所要所で流していき、休憩する間も与えないほど最後は盛り上がりを見せていた。ここまでコンスタントにリリースしているVTuberのオリジナル楽曲アルバムは他にはないだろう。
最後には次回作である第9弾「VirtuaREAL.08」の発表も行われ、2024年もどのようなエンターテイメントを見せてくれるのか、USAGI Productionから今年も目が離せない。

 
VirtuaREAL.07 公式サイト
https://www.virtuareal.net/07

記事 (森山ド・ロ)
写真 (にわとり)