VirtuaREAL.04リリース記念DJ&LIVEイベント

撮影:ニワトリ
レポート・文:前田勇介
 

「VirtuaREAL.04」リリース記念DJ&LIVE イベント公式レポート


2022年4月2日(土)にUSAGI Production(以下:ウサプロ)が主催するVTuberオリジナル楽曲アルバム「VirtuaREAL.04(以下:VR04)」がリリースされ、同日にそのリリース記念イベントが池袋harevutaiにて開催された。同アルバムはクラブシーンでも厚い信頼を寄せられている豪華クリエイター陣がシーンの最先端を行くVTuberらに楽曲提供を行っていることで楽曲派を中心に人気のコンピレーションシリーズとなっているが、その第5弾となる本作は総勢30名らが参加し、そして実際にステージ上でライブでその歌声を響かせたり、DJパフォーマンスを披露した。今回は二部構成に分けて行われたそのリリースパーティの様子をレポートしていく。
 

 

再開発されたばかりの池袋東口エリアには咲き始めたばかりの桜に春風がなびいていた。会場となる池袋harevutaiは2019年11月にオープンしたばかりの未来型ライブ劇場となっており、その最大の特徴とも言える350インチの巨大LEDモニターは、VTuberにピッタリの環境であり、またその持ち味を最大限に活かしたライブ演出でステージは進行していった。
開場1時間ほど前から入場開始を今かと待つ熱量の高いファンの姿もチラホラと見られ、シーンからの注目も集めたイベントだったと思う。これはVitruaREALシリーズの特徴のひとつでもあるが、界隈の実力派Vシンガーはもちろん、音楽以外にもマルチに活動するVTuberや、これから活躍していくであろう若い才能らも多く参加していることも、注目を集める要因であろう。実際にこの日が初ライブという風莉ルアや白瀬あおいといったフレッシュな面々にとってはまさに”晴れ舞台”となったわけだ。

 

第一部、第二部ともに司会進行を務めるのは、このVRシリーズの仕掛け人でもある「USAGI Production」代表のTAMUとスクウェア・エニックスプロデュースのアイドルユニット「GEMS COMPANY」より水科葵だ。イベントはVTuberらによるライブパートと、コンポーザーによるDJパートで構成され、その間にMCふたりとのトークパートを挟む形となっていた。

 

第一部

 

風莉ルア


この日のトップバッターを務めた風莉ルアは「初めてのライブなので、気合いを入れつつ、楽しみつつ、トップバッターなので頑張って場を温めます!」と気合い十分。また「楽曲がリリースされて、VR04をキッカケに私の事を知って、配信に来てくれたりする方も増えて、まだ活動を始めて1年くらいなのですが、アイドルの実感をどんどん感じています!」と緊張ながらに語っていた。1曲目はトップバッターらしく元気よく、そして彼女らしい可愛さに溢れた田村ゆかりの「fancy baby doll」をカバー。続いて「今日初めて私の事を知ったという方もたくさんいらっしゃると思いますが、可愛いだけじゃなくて、大人な風莉も知ってほしい」と水樹奈々の「深愛」を披露すると、配信でも「カッコいい!」などのコメントで溢れる。改めて、来たる5月に活動1周年を迎える旨を語ると場内は暖かい拍手で包まれ「ありがとうございます。幸せで胸がいっぱいです。みなさんの自慢の推しになれるように頑張るので、これからも応援お願いします!」と力強く話してくれた。最後にVR04収録の「星中の帰り道」を披露。ウサプロ所属のDJ/コンポーザーであるAkkeY氏によるFuture Bounceなトラックは彼女のキュートな歌声と相性バツグンでKawaii EDM好きには必聴とも言える1曲である。

 
M01.fancy baby doll
M02.深愛
M03.星中の帰り道
 
 

KAN TAKAHIKO


続いてはKAN TAKAHIKO氏による30分のDJセットが披露された。VirtuaREALに収録されている自身のリミックスからアンセムへと変遷し、GEMS COMPANYの「ゴールデンスパイス」など確実にフロアをロックしていく。「今から30分間は休憩時間みたいなものなので、皆さんお手洗いに行ったりお水飲んだり、全然自由にしてください(笑)」とおどけてみせるが、全然そんな気はゼロだ。時折VTuber以外の楽曲も挟みつつ、サウンド的にもベースミュージックを中心にユーロビートやドラムンベースなど幅広い選曲で繋いでいき、フロアを縦横無尽に掻き乱していく姿は圧巻だ。

 
 

épeler


続いては柚子花、紡音れい、Flare Runeによる3人組バーチャルアイドルの「épeler(エプレ)」が登場。MCのTAMUから「皆さん、緊張してますか?」と問われると「いや、さっきまで大丈夫だったんですけど、直前になってすごい緊張してきました……!」と本音が溢れる一面も。各メンバーの担当カラーを伝えた上で水科からは「3人おるから緊張も1/3やよ!」と励まされた所でライブへ。
 


MCでも触れられていたが、初披露となる新衣装に身をまとったépelerの3名がスクリーンに姿を表すと「Stars&Stars!」「Life After Dreams」と2曲続けて披露。「3人ともVRシリーズに縁があるんですが、こうやってépelerとして初ライブの場を設けて頂けて、今日はとても嬉しいです!」と語り、VR04に収録の「Prism」を歌い上げる。Kakeru氏によるしっとりとしたスピードガラージ調の楽曲で彼女らの大人な一面を覗かせると会場は拍手に包まれる。最後にはなんと3人によるソロメドレーが披露され、青・黄・紫と代わる代わるペンライトで場内を染め上げていった。

M01.Star&Stars!
M02.Life After Dreams
M03.Prism
M04.DANCE is the answer (紡音れい)
M05.My Story! (KOTONOHOUSE feat.柚子花)
M06.Chocolate Eclair (Flare Rune)
 
 

獅子神レオナ (Re:AcT)


開口一番「緊張しちゃって…声が出ないな……(棒読み)」と登場し、「いや、めっちゃ声出てるやん!」「この登場ができるのは舞台慣れしてる証拠ですね」とMC陣から総ツッコミを受けながらも獅子神レオナがさっそく笑いを誘うと、担当カラーのオレンジと緑のペンライトが振られる。これまでに数多くのステージをこなしてきた彼女だからこそのトークが繰り広げられるとお待ちかねのライブパートへ。

 

「はっぴーでいず」では持ち味のノビのある歌声を響かせ、「がんばれがんばれ超がんばれ」は歌声だけじゃなく、底抜けに明るい人柄の彼女が歌うからこそ胸に染み込んでくる。最後はVR04に収録されている「Sunlight」を披露。Jun Kuroda氏によるド直球なドラムンベースサウンドは彼女の歌うことに対するストレートな矜持を感じさせる仕上がりになっていた。

M01.はっぴーでいず
M02.がんばれがんばれ超がんばれ
M03.Sunlight
 
 

The Herb Shop


「The Herb Shopです!皆さん楽しんでいきましょう〜!」と登場すると、自身の楽曲やRemixを中心とした選曲でDJを展開していく。彼らしいダークなサウンドと雰囲気のある楽曲たちでフロアはたちまち彼の世界にに引き込まれる。配信では「良い……」「すごい……」とコメントは三点リーダーの嵐で、会場はもちろん配信勢までもを巻き込んだ独自の世界観で見るものを圧倒していく30分間だった。
 

これを上手く書き残すことが出来ない点に関してはレポートとして失格かもしれないが、彼のDJは生で体感する以上にその凄さを伝えようがないのもまた事実であることは現地や配信を楽しんでくれた皆様になら分かっていただけるはずだ。
 
 

エルセとさめのぽきfeat. somunia


そんなダークな雰囲気から一転、エルセとさめのぽきが登場すると場が一気に和んでいく。「VR00から約3年ぶりなので、成長した姿をみんなに見せたいです!」と意気込むと、今回のライブは起承転結のあるセットリストにVRが結んでくれたご縁でsomuniaとコラボできる事など、第一部のトリを務めるにあたって考えてきた見所を語ってくれた。
「配信も現地もみんなでひとつになろう!」と呼びかけ、突入した1曲目の「星詠みの唄」では深海から美しいハーモニーを届ける。コーラス部分では声が出せないながらも2人の「せーの!」に対して、会場にいるオーディエンスは全身を使って精一杯のレスポンスで応えていく。「そして物語は続いていく」はアコースティック調のバラードソング。「みんな、エルぽきに付いてきてねー!」と導かれるまま、会場は深い深い海の底へと誘われていく。

 

「今日はぽきさんの不思議な力でお部屋と深海を繋げてもらいました!」とsomuniaが登場すると、エルセとのコラボで「Unstep」を披露。somuniaのウィスパーボイスとのハーモニーも非常に心地よい。最後はもちろんVR04収録の「ミラーガール」。kamome sano氏らしいキラキラとしたポップで可愛いトラックに2人のあどけないままの歌声が乗る事でVRシリーズに新しい風を届けてくれているのは間違いない。跳ねるように弾む声と軽やかなメロディが特徴のサビでは配信のコメントもドドッと押し寄せ、クライマックスにふさわしい盛り上がりを見せた。

M01.星詠みの唄
M02.そして物語は続いていく
M03.Unstep
M04.ミラーガール
 
 

第二部

 

プロプロプロダクション (白瀬あおい)


第二部のトップバッターは、プロプロプロダクションより白瀬あおいが登場。彼女もまた、初ライブかつデビューしてまもなく1年というタイミングでの参加ということもあり、緊張を隠せない様子だったが、水科より「アンタさ、配信で見てたけどラジオ体操して緊張をほぐしてたやん!」と指摘されると「無茶振りはやめてください!」と笑顔が戻る。「皆さんのペンライトだけが頼りなので、応援よろしくお願いします」と意気込み、彼女が大好きな曲だという坂本真綾のプラチナをカヴァー。続く2曲目もカヴァー楽曲を披露し、「自分自身と重ねて、前向きな気持ちになれる曲です!」と紹介したのはYOASOBIの群青。ラストはRay_Oh氏が書き下ろした彼女にとって初のオリジナル曲となる「Twinkle=Sparkle」を披露。堂々とした歌声で初めての晴れ舞台を締めくくった。

M01.プラチナ
M02.群青
M03.Twinkle=Sparkle
 
 

D.watt


IOSYS、そしてウサプロ所属のDJ/コンポーザーであるD.watt氏が登場すると会場/配信ともに大いに盛り上がる。D.I.Y.からの被せ気味にChantして!!!!!を繋いでいくプレイなどで沸かせていくし、また楽曲に引っ掛けて「ちゃんと!盛り上がってますか!!」と語りかけていき、しっかりとフロアの心を掴んでいく。BPM的にも急上昇していき、自由で大胆かつ意味の込められた選曲に納得させられる。最後にはスパチャを皆さんにお願いするなど、最後まで完璧なエンターテイナーとして舞台に立ち続け、30分間を駆け抜けたのだった。
 
 

DJ汐りんご(バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI) feat. 長谷みこと(GEMS COMPANY)


続いて登場したのは「バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI」より恋汐りんご。「私、いま気付いちゃったんだけど、手袋が右手だけ邪魔かもしれないなの」と笑いを誘い「今日の会場はみんなあったかい屋さんなのな〜!」とマイペースにDJタイムがスタート。先にプレイしていたD.watt氏との曲から始め、自身の楽曲を自らインストを流し歌唱しつつ、DJもしつつの器用なステージパフォーマンスを繰り広げていく。
 

GEMS COMPANYから長谷みことが登場すると、恋汐りんごとのスペシャルコラボでパフォーマンスを披露。「今日はみずしーもいますけど、普段とは違って1人なのでノビノビやりたいですが、ジェムカンを背負っているのでちょっと緊張です」と語りつつも、水科と息のあった掛け合いを見せていく。恋汐りんごが「100万回くらい見て、踊りを練習したなの!」とサプライズで驚かせ、長谷みことのソロ曲「少女聖戦パラドクス」を披露すると、会場のボルテージも高まり「今度は汐らしく可愛く歌いまる〜!」とVR04収録の「それは、ぷにぷに」を歌い上げる。配信のコメントもぷにぷにする人らで溢れ、甘々の可愛い空間に一気に染まっていった。

M01.絶対に笑ってはいけないはじめてのデート24時
M02.The One and Only
M03.Chocolate Éclair (osirasekita Remix)
M04.スチャラカ☆タロリンパfeat.チバニャン (KAN TAKAHIKO Remix) 
M05.さなのおうた。(Nor Remix)
M06.クッキンアイドルりんバンりん♡汐りんのテーマ
M07.少女聖戦パラドクス
M08.それは、ぷにぷに
 
 

猫田ぺぺろ&星乃すぴか (バーチャルメイド喫茶『ますかれーど』)


続いては「いやし」と「いやらし」をお給仕する世界初で唯一のバーチャルメイド喫茶(自称)『ますかれーど』より「猫田ぺぺろ」と「星乃すぴか」が登場。まずは名刺がわりの「ますかれーど!」とVR04より「ますか♡ほりっく」を披露する。kijibato氏提供の「ますか♡ほりっく」は彼らしい速いBPMとおとぎ話のようなメルヘンな展開が彼女らにピッタリの楽曲となっている。MCや楽曲で暴れまわった2人だが、最後の「I`m Home」はしんみりとした1曲になっており、まさに”ただいま”と言いたくなるような展開の持っていき方がまたズルイ。
 

彼女たちの特徴として、リアルとバーチャルの双方で活動している点も挙げられるが、最後にはサプライズでそんな2人がリアルの姿でステージに現れると、予想だにしなかった展開に現地も配信も大きくどよめいたが、コメントを求められ「あ、すみません。緊張で飛びました……(笑)」と軽いアクシデントがあるも「ご主人様たちのお顔が見れて、ちょっと安心しました!」「勇気出して出てきてよかったです!感無量です!」と感謝の気持ちを直接伝えてくれた。

M01.ますかれーど!
M02.ますか♡ほりっく
M03.I'm Home
 
 

あおぎり高校 (音霊魂子)


続いての出演者はあおぎり高校から音霊魂子が登場。「先ほどD.wattさんもスパチャしろ!って言ってましたけど、きょうはあおぎり節全開でお願いしますね!」とTAMUが声を掛けると「いや、その言葉がめっちゃプレッシャーになってるんですよ!」と普段の活動ではあまり歌唱をしない分、緊張も押し寄せているのが伝わる。「最近ショート動画がプチバズってるので、ぜひチェックしてください!」と独特の告知もだが、今回のVR04に収録されている「VTuberのすべて」もまたユニークな1曲だ。D.watt氏のDJターンでの練習の成果が発揮されていた同曲のコールアンドレスポンスでは「VTuberに案件を!」とまさに魂の叫びを会場に響かせていた。
 

また「HAPPY LIFE!」も同様にクレバーな曲というか、再生数を稼ぐぞ!という雑草魂を感じる楽曲だが、3曲目はVR02に収録のあおぎり高校「トリコロール・ステップ」を今夜だけのソロverで歌ってくれるサプライズも。音源化もされていないスペシャルな時間を最後まで堪能することが出来た。

M01.Vtuberのすべて
M02.HAPPY LIFE!
M03.トリコロール・ステップ (音霊魂子ver.)
 
 

TAMU


第二部のトリを務めるのは、VirtuaREALシリーズを統括するTAMUによるDJプレイだ。これまでのVRシリーズはもちろん、今日のこれまでのライブを振り返るような集大成的な展開に、場内も手拍子で応えていく。一部のトリを務めた”エルぽき”の楽曲で畳み掛けるようにクライマックスまで駆け抜けるように楽曲たちを紡いでいく。そのほとんどがこのVRシリーズを通して生まれてきた楽曲たちで、回を重ねるごとにまたひとつ大切な思い出のピースが増えていく。そんなピースをひとつひとつ慈しむように、それらをそっとハメ込むように優しく曲を繋いでいくTAMUの姿が印象的だった。
 

最後に再び、水科葵も姿を表すと、一部二部合わせて6時間弱ものステージがグランドフィナーレを迎える。まずは2022年9月にこのVRシリーズの最新作となる「VirtuaREAL.05」のリリースが決定。これとは別に今年の夏にVRシリーズとはまた違った企画のアルバムがリリースされることも告知された。
 

また2022年4月29日(金・祝) / 30日(土)で開催されるニコニコ超会議内で行われる VTuber Fes Japan 2022 ステージにて、VTube楽曲にフォーカスしたDJイベント「VMusic」の2DAYS開催も決定しており、こちらは入場無料で豪華DJのアクトを観覧可能となっているので、気になった方はぜひチェックして頂きたい。
 
https://vtuberfesjapan.jp/event/vmusic/
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改めてイベントを振り返ってみても、ファンの熱量の高さと節度よく参加していた姿に驚かされた。当日はオールスタンディングで、足元にはディスタンスを印した白線が引かれていただけだったが、大きな混乱もなく、周囲を気にしながらもマナー良く、思い切り楽しんでいたように見受けられた。ここまで5回も開催してきた中で育まれたものだとは思うが、このカルチャーが今後も続いてくれることを切に願う。また、重ねてになるが次回、過去最大規模での制作が決まっているVirtuaREAL.05についても期待せざるを得ない。回を重ねるごとに規模感が増していくVRシリーズは一体どこまで発展していくのか?常に最高値を更新し続けるUSAGI Productionだからこそ、今後ともその動向は見逃せない。